ライトノベルという文化

去年の暮れから、ライトノベルを読むようになりました。

 

こういう仕事をしておきながらも、ライトノベルというジャンルが

いまいち雲をつかむようでちゃんと分かっていなかったし、

色んな人に尋ねてみてもはっきりした答えが返ってこなくて。

同じ小説なのになんとなく差別的な区分けを感じるというか、

子どもの読みものとして別枠として設定されていることにも違和感がありました。

 

その道の方からは「あぁ電撃文庫ね」と返されることもあったけれど、

そもそも電撃文庫自体はライトノベルと言う単語が浸透する前からあるし、

電撃からデビューした作家として日本を代表する作家のひとりである

有川浩さんだっているわけで。

 

それなら自分で読んでつかみに行くべきだ、とやっと心に決めました。

 

ラノベ初心者として勧められるがままに色々と読みはじめましたが、

年下の友人から勧められたラノベの中で、

ここ最近最も面白かったのが乙野四方字さんの『僕が愛したすべての君へ』

books.google.co.jp

読み始めは「表紙は今時のライトノベルらしいイラストだ…それにしてもこのタイトル…うーん、ハヤカワっぽくないような…中高生が好きそうな恋愛小説なんだろうか?あれ、ハヤカワってライトノベルのレーベル出してるんだっけ??」とさまざまな

疑問を胸に抱きつつ読み始めましたが、いい意味で期待を裏切られました。

 

青春時代の恋愛要素もストーリー展開の重要な軸ではあるのですが、

好意を寄せるクラスメイトと無事に両思いになって付き合いました、という感じの

恋愛小説とは趣向が異なります。語弊を恐れずに言うなら理系のお話でもあります。

 

少しだけ詳細を語ると「最近職場でこの人とすれ違ってるような気がするな」とか

「何だかこの間話してたことと、つじつまが合わない」という

日常生活で感じるちょっとしたズレって誰にでもあると思うのですが、

これらのズレについて理系のロジックで解き明かそうとする点にひきつけられました。

 

この本に出てくる研究の新奇性についてはよく分からないけれど、

本当にこういう研究があるのなら深く知りたいと思うと同時に、

時間軸の違いや面白さを描いた作品ってあるようにして意外と巡り合えないので、

新たな切り口を見たような気がします。

 

年下の子たちが「生き方を考えた」と言うだけある作品でした。

年下の子たちは、青春時代をリアルタイムで経験しているからなのか、

どうしてもこの本の恋愛要素に注目が行くみたい。

けれど、青春時代を過ぎた私にとっては人生の転機を思い返したり、

「これまで出会った人に対して心から相手を思いやることができていたのか?」

「もっといろんな可能性を踏まえて接することができたんじゃないか?」

「あの時、自分の努力が足りず反故にしてしまった選択肢について

感じてきた後悔をどう乗り切ってきたのか?」等と

青春時代を追体験しつつ、これまでの自分自身との対話が出来る1冊でした。

 

”可能性ごと愛する”という言葉が胸に響きました。

この言葉は、すべての道に通じる真理を突いていると思う。

可能性に期待してしまう人間の弱さ然り。

好きなことや自分の興味関心を発展させようとすればするほど、

辛いことや辞めたくなること、あえて諦めることやしがらみだってあるしね。

 

もっと売れ線のタイトルを付けることもできたのでしょうが、

この本の世界観と解を著した意味あるタイトルだと分かった時の感動は、

ぜひ色んな人に読んで体感して欲しいです。

 

同時刊行作品として『君が愛したすべての僕へ』も刊行されているのですが、

こちらも別なお話として楽しむことができました。

私は『僕愛』の方が好み。

2作とも読み終えてみて初めて繋がる面白さもあります。

 

この記事を投稿するにあたってさっき軽くWebであらすじを確認したところ、

Amazonレビュー ☆4.5!

Googleユーザー 96%高評価

…すごい!

 

読書メーターも軽くレビューを読んだら、

同じように思う大人のみなさんがたくさんいて何だか嬉しくなった。笑

Newtonのパラレルワールドシュレディンガーの猫特集が好みの人にも

きっとハマるんじゃないかなぁ🐱

 

三秋 縋さんの『三日間の幸福』と佐野 徹夜さんの『君は夜空に光り輝く』も

よかったです。蒲池 和馬さんの『とある魔術の禁書目録』はアニメで追い始めました。

 

大人にとってライトノベルは思春期の感情を呼び起こさせる本だと思います。

あの頃の感情ともう一度向き合う可能性を秘めていると近頃感じています。

 

2020年読んだ本上半期編は、来月に!